就職氷河期世代のミッドライフ・クライシス

目下、政府や国会で就職氷河期世代への支援が検討されている。放ってはおけないテーマである。
私自身、50歳にさしかかる、まさに就職氷河期世代の一員だ。
大学卒業後、なんとか就職することができたが当時の就職活動は苦戦した。希望する企業の採用枠が無い、もしくはあってもかなり限られた枠しかないといった状況が、かなりの業種であったように記憶している。まわりの人たちの中でも希望が叶わず、就職浪人をする選択をした人もちらほらいた。今は売り手市場ということで、学生側が企業を選んでいる雰囲気が採用面接をしている中でも感じることも多いが、当時は買い手市場で明らかに企業側が学生を選別していた。
こういった感じで、社会人への入り口は“氷河期”という言葉が示す通りに厳しい状況にあったが、その後も、例えば2008年のリーマンショックなどもあり、決して働く環境が良かった世代ではないと思う。私は現在3社目の会社で働いているが、今の若者たちのように転職を機に収入が大きく増えたわけでもない。
そんなこともあり、会社に対しある種冷めている世代ではあると思うが、就職氷河期世代は地道にコツコツやっている人が多いように感じる。しかし、次の2つが就職氷河期世代をさらに苦しめている。それは、「ジョブ型」と「物価高」である。
まず「ジョブ型」であるが、特に一般的なThe会社みたいなところで働かれてきた就職氷河期世代は、自分のスキル云々よりも、“総合職”や“一般職”という枠組みの中で働いてこられた方も多いと思う。脈略のない部署を転々としたり、昨今もてはやされるスキルを身に付けられる環境には配属されないことも当たり前であった。しかし、会社生活が終盤に入りつつあるこのタイミングでの“ルール変更”である。
就職氷河期世代の多くがこの「ジョブ型」というルール変更においても負の影響を受けていると思う。目下、賃上げが何かにつけて取沙汰されるが、実情はこのルール変更が錦の御旗として使われ、会社の人件費増加分の多くが若手をつなぎとめるべくための資金と化し、就職氷河期世代は賃上げの恩恵に預かりにくくなっているのではないだろうか。
もうひとつの「物価高」については、これまで将来に備え貯めてきた資金が目減りしているという負の影響を受けている。就職氷河期世代は先ほど述べたように社会人の入り口やその途中においても決して楽観視できる状況にはなかったために、堅実に貯蓄されてきた人も多いと思うが、これまで築き上げた資産が昨今の物価高で目減りしてしまっているのである。
こんな感じで就職氷河期世代はいつの時代でも苦労を負ってきているが、おそらく大きな声を上げることはないだろう。就職氷河期世代は冷めているのである。沈黙というものが強いメッセージにもなりうるが、メッセージがどこかに届くことも期待はしていないのである。何か社会の潮目が変わるようなことや社会の雰囲気が変わることを願う。

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